GⅡ日経賞(中山芝2500m)は天皇賞・春へと繋がる大切なステップレースです。過去にはフェノーメノやマイネルキッツがこのレースから本番を制しており、今年も注目が集まる1戦と言えます。
上位の人気に推されるのは昨年の菊花賞馬キセキ、国際GⅠの香港ヴァーズを3着と好走したトーセンバジルの2頭。前者はC・ルメール騎手+角居厩舎、後者はM・デムーロ騎手+藤原英厩舎のコンビとあって、いかにも人気が集まりそうですね。
人気の2頭は中山適性に「?」が……
キセキとトーセンバジルはともにストライド走法なので、器用さの問われる小回り・内回り向きではありません。
キセキは父ルーラーシップ譲りの重厚なストライドで走るため、時計のかかる中山の馬場そのものはOKです。同じ父をもつダンビュライトがAJCC(GⅡ・中山芝2200m)を先行して押し切ったように、前目のポジションを取れれば……。
トーセンバジルはしなやかにキレるハービンジャー産駒で、ベストは京都コースです。時計のかかる中山は「?」が付きますし、京都大賞典や香港ヴァーズのように内を上手く立ち回れれば……。
✳︎昨年大ブレイクした種牡馬ハービンジャーは、Nureyevの血を引く牝馬との間に大物を出しています。GⅠ馬となったディアドラ、モズカッチャン、ペルシアンナイトの3頭はいずれもNureyevもちです。
トーセンバジルは母系にこの血を引かないので、上記の3頭のような重厚なストライドではなく、しなやかで軽い走りが特徴的な馬と言えるでしょう。
種牡馬ハービンジャーについては以下の記事で詳しく解説しているので、よければご参照下さい。
中山芝2500mと言えば!
有馬記念が行われる舞台としても知られる中山芝2500mは、ステイゴールド産駒の勝利数がぶっちぎりの条件です。近年、中山芝2200〜2500mの下級条件では「父ステイゴールド」という字面をよく目にします。
代表産駒のドリームジャーニー=オルフェーヴルの全兄弟はパワフルなピッチ走法(✳︎)でしたから、ステイゴールドがノーザンテーストを通して小回り向きのパワーと器用さを伝えるのは明らかです。
✳︎オルフェーヴルは直線の長いコースでも好走していますが、これはもともとの競走能力がずば抜けていたからでしょう。
今年の日経賞に出馬登録しているなかでステイゴールド産駒はショウナンバッハの1頭のみ。父のコース適性を利して、ここでも好走できるのかに注目ですね。
中山コースと言えばRoberto
マーチSの展望記事でも書いたように、しばらく・ダートを問わず中山コースと好相性の血と言えば、そう、パワーとスタミナに優れた「Roberto」です。
もっともRobertoらしいパワーが表現されている名馬を上げるなら、有馬記念を連覇したグラスワンダーでしょう。パワー・ピッチで前脚を力強くかき込む走りは、いかにも小回りの中山向きで、これこそ「Roberto」と呼べるものです。
✳︎グラスワンダーは母父Danzigからも中山向きのパワーを獲得しています。
それでは、今年の出走予定馬のなかでRobertoの血を引く馬を探してみましょう。
アクションスター
ゼーヴィント
ノーブルマーズ
(50音順)
この3頭のなかで注目したいのは、Pacific Princess牝系出身のゼーヴィントと1600万下を勝ち上がったばかりのノーブルマーズ。
ゼーヴィントについては血統やこれまでの走りなど過去の記事で詳しく解説しているので、ここでは簡単に触れます。
ゼーヴィント 5歳牡馬
ゼーヴィントはラジオNIKKEI賞(GⅢ・福島芝1800m)を制した後、中山と福島の重賞に絞ったローテーションが組まれているように、小回り向きの器用さとパワーが魅力の馬です。
今走は昨夏の七夕賞1着以来となる骨折休養明けとなり、どこまで体調が戻っているのかがポイントとなるでしょう。中山適性に関してはこのメンバーでも1、2を争うだけに、休み明けでも期待をしたくなります。
ノーブルマーズ 5歳牡馬
父:ジャングルポケット
母:アイアンドユー(母父:Silver Hawk)
厩舎:宮本博(栗東)
生産:タガミファーム
2歳のデビューからコンスタントに好走し、3歳時にはセントライト記念5着(2着のゼーヴィントとは0.4差)と掲示板内に入る活躍を見せました。前走の迎春S(1600万下)を勝ってOP入りを果たし、今走は3歳秋以来の重賞出走となります。
血統
母父Silver HawkはRoberto直仔で、グラスワンダーの父としても知られる種牡馬。母アイアンドユーはNasrullah5×4にBull Lea5×5のクロスでRobertoの血を刺激しており、産駒は小回り・内回り向きの先行馬が多く出ます。
ノーブルマーズ自身は5代アウトブリードなので、Robertoのパワーとスタミナが素直に現れた先行馬となりました。いかにも小回り向きの脚質と走りで、中山コースは阪神内回り2000〜2200mの次に得意な舞台でしょう。
強いクロスをもたない配合系となっており、まだまだジワジワと成長するはずで、重賞挑戦となる今走が試金石となります。
日経賞に向けて
3歳秋に出走したセントライト記念5着から、「重賞で全く歯が立たない」などということはありません。また、今年の日経賞はGⅠ好走の経験をもつのがキセキのみですから、ノーブルマーズにも馬券圏内に入るチャンスが……。
天皇賞・春の前哨戦ということもあって、近年の日経賞は前半をゆったりと入るのが特徴です。現在の中山芝はそれほど高速ではないので、3コーナー過ぎからピッチが上がったとしても、残り5Fのすべてが11秒台に入った2015年のようなレースにはならないでしょう。時計のかかる馬場が合うノーブルマーズにとってプラスの馬場コンディションと展開になりますね。
この馬はもともと勝ち味に遅い馬だけに、重賞をアッサリ勝てるのかは不安があるものの、ここで2、3着に好走しても驚けません。
ガンコは欧州向きのパワー配合
Robertoの血を引かないものの、欧州の芝レースでも好走できる可能性のあるパワータイプの馬がこのレースに出走を予定しています。
ガンコ 5歳牡馬
父:ナカヤマフェスタ
母:シングアップロック(母父:シングスピール)
厩舎:松元茂樹(栗東)
昨年末までダートを主戦に走っていた同馬は芝のレースへと転向すると、日経新春杯3着→1600万下1着と成績が急上昇しました。
ステイゴールド直仔のナカヤマフェスタとパワー&器用さを伝える母父シングスピールが掛け合わされ、自身はHalo4×4とDanzig5×4のクロスをもちます。配合からは欧州のタフな芝レースでも好走できるほどで、中山芝2500mはずんどばの舞台でしょう。
本格的な欧州血統(母系の奥はドイツ血統)だけに、高速馬場だとアッサリと鋭さ負けしてしまいますが、時計のかかるスタミナ勝負はドンと来いのタイプ。藤岡佑介騎手がスピードの問われる質のレースにもち込まないよう気をつければ、重賞制覇のチャンスも十分です。
まとめ
今年の日経賞は上位人気のキセキとトーセンバジルが中山にずんどばの適性をもっているとは言えないだけに、ノーブルマーズやガンコの逆転があっても驚けません。
先にも述べたように、ペースのカギを握るガンコ+藤岡佑介騎手が昨年のミライヘノツバサのイメージで騎乗するのなら、中山コース適性の有無がはっきりと出るレースになるでしょう。
以上、お読みいただきありがとうございました。